さて新たな年を迎え、政治や経済、社会に関する様々な見通しや将来予測を各種媒体で見聞きするシーズンになりました。2019年の経済動向について国際機関やシンクタンク、エコノミストが行うデータの裏付けと深い洞察に基づく将来の経済予測は、傾聴に値するものです。しかし数多くあるこれらの景気や経済に関する予測を「当たる」か「当たらない」で評価すれは、結果は概ね厳しいものになるのではないでしょうか。
将来の社会保障政策の検討において欠かせないものの一つに人口動態に関する将来予測があります。人口動態に関する推計は比較的精度の高いものとされていますが、高齢化など過去の人口動態の予測が示してきた将来は、これまでのところ少しずつ着実に現実化しているように感じられます。世界的な平均寿命の伸長のトレンドは今も継続しており、日本はそのトップランナーの一人です。
長寿化が進む中、公的年金制度など社会保障制度の持続可能性の担保は喫緊の課題です。各国も年金制度の改革に取り組んでおり、日本も例外ではありません。特に最近、給付水準の引き下げ、掛金負担の増加、支給開始年齢の引き上げなどに関する議論を頻繁に耳にするようになり、関係者の検討がより具体化・先鋭化しているように感じられます。2018年2月には「高齢社会対策大綱」が閣議決定されました。その中で70歳を超えても年金の繰り下げ受給を選択できるよう検討を求めていますが、これを契機に高齢者就業の拡大が重要な政策課題として浮上しています。歴史的には、公的年金の支給開始年齢の引き上げが行われ、それを追いかかる形で高齢者雇用政策が実施する流れは過去にもありました。70歳以降での年金受給を可能にすることは、今後のさらなる支給開始年齢の引き上げの布石と見ることもできますし、それに応じて高齢者雇用政策が促進・実施されれば、企業にも対応が求められることでしょう。
平均寿命が伸び公的年金の給付の負担が増える一方で、健康寿命にも伸長が見られる点は生産年齢人口の引き上げ余地の観点から朗報です。社会保障制度を持続可能なものとするため掛金負担の担い手を増やす政策が実施されることは必然的な帰結です。企業は今後、労働関連法制の改定などにも後押しされながら高齢者の就業の受け皿の提供を求められる公算が高く、定年年齢や再雇用制度の見直しなどの比較短期的な課題への取り組みも必要となるでしょう。
今後の企業活動を支える人材マネジメントを考える際、今後さらに進展する高齢化と若年層の労働人口減少への対応に加え、人々の働き方の多様化や企業活動のグローバル化、テクノロジーの発達にどのように向き合うかの視点は非常に重要になります。企業活動を担う人的資源として、非正規社員、外国人労働者(高度・非高度外国人材)、人件費の安い海外への業務のオフショアリング、ソフトフェア投資による業務の効率化、バーチャルな知的労働者(RPA:
Robotic Process Automation)の活用は、これまでの国内採用の正社員を働き手の主体とする考え方からの脱却を促すことになると思われます。
仕事や働き方の変化に伴う雇用の分散化・多様化が進む中で、報酬制度や福利厚生制度など人材に対する処遇のあり方も変化していくでしょう。福利厚生制度の中でもとりわけ退職給付制度はその設計において長期的視点に基づく検討が不可欠です。依然として日本の企業に少なからず見られる入社から定年まで長期の正社員の雇用契約を前提とした制度ではなく、フューチャー・オブ・ワーク時代の退職給付の検討が必要になるでしょう。
図: 今後の退職給付制度の検討要素
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