昨今の不安定な金融市場を背景に、企業は投資戦略や年金財政戦略の再考を余儀なくされています。2019年から2021年までの株式市場の好調なパフォーマンスのもと、DB制度の積立状況は近年で最も良好な結果となっています。弊社(WTW)のWTW Pension Index for Japanは、退職給付債務(PBO)の積立状況がベンチマークとなる仮想的な制度においてどのように変動するかを評価する指標です。目下、当指標は2011以降の最高値を表しており、100%に迫る数値となっています。
現在のような不安定な状況下では、複雑に影響しあう年金リスクから生じ得る多様な結果を検証することが有益です。年金ALMは、年金制度に関するさまざまなリスクを資産と債務で整合性の取れた一貫した前提条件を使用してシミュレーションすることで、企業がこれらの不確実性に適切に対処するための有用な示唆を与えます。
近年で最も好調な年金資産の積立状況
では、現在の状況について、良い側面から見ていきましょう。2019年から2021年までの株式市場の好調なパフォーマンスと金利上昇を背景に、年金資産の積立状況は好調を維持しています。
年金資産と年金債務の変動に影響を与える主要因の不安定性
一方で、企業は様々な課題に直面しています。年金資産と年金債務の変動に影響を与える主要因である、経済成長、インフレ率、金利がこのところ非常に不安定です。
依然変動の大きい株式市場
日経225ならびにS&P 500 VIXインデックス(投資家が見込む株価指数の変動幅を表す指標で恐怖指数とも呼ばれる)は年初以降20以上(20を超えると不安心理が高まっていると解釈される)で取引されています。
金利上昇
マイナス金利が数年続きましたが、現在は10年国債利回りがプラスに転じています。
インフレ率が過去7年で最高に
4月の消費者物価指数は、日銀のインフレターゲットである2%を上回り、2.5%に上昇しました。

進む円安
日本円が対米ドルで20年ぶりの最安値が続いています。
市場を取り巻くその他の変化
株式市場は引き続き変動が激しく、また金利も上昇傾向にあることから、企業は債券や株式といった伝統的資産クラスへのアロケーションを徐々に減らしつつあります。
従来とは異なる資産クラスへの投資が増加
図 3. 企業年金連合会 のオールタナティブ投資へのアロケーション
出典: 企業年金連合会(2021年3月31日時点)
| オールタナティブ投資へのアロケーション |
<3% |
3-5% |
5-10% |
10-15% |
>15% |
| 日本のDB制度での普及率plans |
8% |
7% |
19% |
18% |
49% |
日本におけるESG投資の増加
投資について決定する際にESG投資を検討する企業が増加しています。WTWの調査では、62%の企業が、サステナブルな投資をすでに実施している、または検討していると回答しています。
年金ガバナンスの向上
年金制度のガバナンスへの関心が高まる中、多くの企業がガバナンスの強化へ動き出しています。
DC法の法改正がDB制度戦略に与える影響
確定拠出年金制度(DC制度)の拠出限度額が変更になります。2024年12月1日以降、DB制度とDC制度を持つ企業のDC拠出限度額は、DB制度の掛金額(および他制度掛金相当額)を計算する際に用いた予定利率の影響を受けます。ハイリスク・ハイリターンの投資戦略を採用している場合は、DB制度の予定利率が高くなることによって、DC拠出限度額も高くなります。
企業が今対応すべきこと
市場の変化や経済動向、社会環境の変化などの数多くの要因により、企業は投資戦略や掛金拠出戦略の見直しを迫られています。
企業はALM分析の結果を活用して対応策を検討しています。WTWのALM分析では、多数の経済シナリオを用いて、年金資産と年金債務を整合的にシミュレーションするため、企業が年金制度の財務・ビジネス上の目標達成に向けて最適な戦略を決定する際に活用することができます。
ALM分析の結果を活用すれば次のような事柄を検討することができます。
- ターゲット・リターンやリスク
- DB制度の財政上の予定利率の見直し、標準掛金の抑制機会
- 金利上昇が積立状況に及ぼす影響
- 財政計算に使用する前提条件
- 国内資産と外国資産間の配分の見直しや為替ヘッジ
- 伝統資産以外の資産クラスへの投資の可能性(ヘッジファンド、プライベートエクイティ、不動産他)
- 年金制度のガバナンス構築